今年最初のエントリですね.あけましておめでとうございます.2月ですが.

さて,バイオリンを始めて,そう時間をおかずに最初に困るのが,「弦が切れた!! 張り替えなきゃ」という場面でしょう.

「ここに弦を固定して,こっちに弦を巻けばいいんだろ」

という,見たまんまの理解で,まぁ,OKなんですが,どんなことにも手順やコツがあります.仁和寺にある法師じゃないですが,初めての人は,いきなり動く前に概要をつかんでおくが吉なのです.

まず,一番やってはいけないことを警告します.

弦を全部外してはいけない!

同じ弦楽器――ギター,マンドリン,ウクレレ,琴,などなど――の経験者がよくやってしまうのが,セット弦を買ってきて,弦の全取っ換え! という場面で,まず古い弦を全部外して,新しい弦を一本ずつ張っていくというやり方です.これは,バイオリンではやってはいけません.

なぜなら,魂柱が倒れるからです.

cross_section.gif

上図は,バイオリンを駒の右足あたりで,ちょうど魂柱を脳天唐竹割りするがごとく、駒に対して直角に切った断面図です.バイオリンは,弦の張力によって駒が表板を押し,その下に立ててある魂柱を裏板との間に挟んでいます.つまり,駒も,魂柱も,接着されているわけではなく,弦が緩めば倒れます.駒は,まぁ,見えるところにあるので,弦が無くなれば倒れるのが誰にでも理解できますが,魂柱は f 孔から覗いても,なかなか状態が見えないので,知らないとうっかりやってしまいがちです.

また,バイオリンは,弦4本分の大きな圧力がボディにかかった状態で安定している楽器です.このことを考慮しても,全ての弦を緩めるのはできるだけ避けたいところです.

というわけで,古い弦を一本緩め,取り去り,新しい弦に取り換え,その弦をある程度張り,しかるが後に,次の古い弦を緩め......という段取りで弦を張り替えます.

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で,具体的な張り方なんですが,注意が3つ.

    ①ボールエンド,ループエンドに注意

    ②駒を傾けないように注意

    ③ペグへの巻き方に注意

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① ボールエンド,ループエンド

これは,このエントリじゃなくて,弦の買い方のエントリで書くべきだった.後で追記しよう.

E線(つまり,1弦)の,テールピースに付ける末端には二種類あります.下図で,先端が丸く環になっているループエンド(上)と,丸い金属が付いているボールエンド(下)です.

ball_loop.jpg

これらは,弦のチューニングを微調整するときに用いる「アジャスタ」に弦を取り付けるときのインタフェースです.ループエンドは,爪のような突起にひっかけ,ボールエンドは,スリットの間に弦を挟んで,ボール部分をつっかえさせて弦を留めます.よって,今から張り替えるE線が,ボールエンドなのかループエンドなのか買う前に調べておかないと,張り替えようとした瞬間にギャーとなります.ギャーとなる前に,迷ったら購入を一旦保留して,どちらだったのか確認するのが真っ当な態度だと思います.真っ当でない事情でどっちか分からない場合は,ループエンドを買いましょう.ループエンドは,ボールエンド用のアジャスタにも付けられます(下の動画参照).逆に,ボールエンドは,ループエンド用のアジャスタには付けられません.言っておきますが,弦にかかる張力を考えると,ちょっとした工作でコンバートできるものではありません(ただし,ボールエンドのボールがとれてループエンドになるよ,っていうコンセプトの弦もあります).ちなみに,ADG線は,ボールエンドをテールピースの穴に直接ひっかけます.もし,E線も同様に,アジャスタをかまさずにテールピースに直接つけるなら,ボールエンドを選ぶわけですね.

② 駒を傾けないように注意

弦を張ると,駒は,糸巻きの方向に引っ張られます.逆に,緩めるときは,駒に力はかかりません.つまり,駒にかかる弦の力は常に一方向です.そのため,何も考えずに日々バイオリンを弾いているだけで,駒には徐々に歪みが蓄積し,ある日,張り替えた弦を巻きとっているときにパタリと倒れます.非常にありがちなパターンです.

cross_section2.gif

駒が倒れると,何がまずいのか? 

だから,魂柱が倒れるんですってば.あれ,適当な位置に立っているわけじゃないので,倒れたら専門の業者に立ててもらって,位置を調整することになるんですよ.結構,オオゴトです.気を付けましょう.

もし駒が倒れたら,まず f 孔から覗き込んで,魂柱が無事か確かめます.魂柱はまだ立っている? それならラッキーです.静かに,少し弦を緩めて駒を立て直しましょう.駒の脚の跡が表板に残っているはずですので,そこに合わせて,表板と直角になるところまでグイッと引き起こします.ここまでが応急処置です.そして,違和感があれば楽器を買った楽器屋に連絡ですかね......(魂柱に影響なし! と信じるなら問題なし).え? リペアサービスしてくれるところで買ってない? 知ーらない.まぁ,バイオリン修理を扱っているとこならどこでも.

③ペグへの巻き方

最後に,日常使用レベルで最も重要なことを書きます.

弦の張り方に上手い下手があるとすれば,それは「チューニングがしやすなるように,弦をペグに巻けるか否か」です.動画(6分あります)を見てもらえば,説明に文章を費やさなくてすむ......かと思いましたが,細かい点が分かりにくいので,動画の後に最低限のTIPSを書きます.

動画の中で,弦を外すときに,一気にバン! と弦が緩むのを見て分かる通り,弦の張力は非常に大きい.その張力を保つには,ペグは糸倉の中にネジ込まれて「ぎっちり」固定されなければなりません.そのために,弦は,ペグを中に引き込むように,糸倉の壁に寄せて巻いていくのです.もちろん,そうしてもペグが固定されない,あるいは逆にキツキツでペグが回らないような状況もあり得るでしょう.そうならないように,バイオリン職人は,糸倉の穴径やペグの軸の形を整えて,ちょうど音程が合うあたりでペグがぎゅっと止まるように調整するわけです.

バイオリン職人に調整してもらえない状況で,プレイヤーが出来る対処は,弦の方の長さの調整です.巻く量が多くて弦がギチギチになる場合(これは径の太いG線で起きやすい)は,弦のペグに巻く末端を切って短くしてください.逆に,短すぎる場合は対処不能です.楽器屋へGOだ.あるいは,遊星歯車(プラネタリーギア)内蔵のペグに入れ替えれば,ペグが緩んで回ってしまう問題は解決します.

弦の張り方についてはこんなところかな.

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友人のエルデ楽器店主に頼まれて,4月12日(土)にレッスンイベントをやります.バイオリンはおろか,楽器を触ったことすらない人を,2時間で曲が弾ける状態にしろ,というミッションを与えられました.まぁ,インポッシブルってほどでもない.フレットバイオリンなら,補助輪付きで自転車に乗るようなものなので,イケるだろー,という感覚です.問題は「何の曲」か,だなー.キラキラ星じゃ,定番すぎてつまらなくない?