さて、順番的には、弦を張ったんだから、次は調弦(=チューニング)ですね。

最初に、提言を。

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音叉はいらない。

中高校生くらいの一時期、ミュ~ジシャンを気取って、常に音叉を携帯していました。

「お客様の中に、どなたかA=440Hzで正確にチューニングできる方はいらっしゃいませんか!!」

「ふっふっふ、こんなこともあろうかと......(コーン♪)」

みたいな場面、......を思い描いていたわけではありませんが、何かの折に、さも当然のように音叉を取り出して、ささっと楽器をチューニングできるように、常に備えていたわけです。かっこいい。で、結局、その音叉を活用する機会が一度でもあったかというと、まぁ、一回あったんですが、それは弁当の箸を忘れたときだったので、音楽とは関係ない話です。

この音叉(チューニングフォーク)ですが、「伝統的な」調弦ツールとして現在も店頭に並んでいるものの、実は、めちゃくちゃユーザビリティ(使い勝手)の悪いシロモノです。

まず、貴方は、音叉を手にとって、コーンと机の角にでも打ちつけます。で、そのまま音叉を耳に当てて、響いている音を聞くわけです。ここで、頭の中にコオオオオーーンとなっているその音程の記憶を、こぼさないようにしながら、音叉を下に置いて、今度は、バイオリンを手に取ります。弦を弾いてポーンと音を出します。その音と、さっきの音叉の音程を比較します。おっと、バイオリンの方が、音叉より低いようです。では、早速、ペグをキリキリと巻きます。音程が高くなりました。その状態で弦をもういちど弾きます。ポーン。さぁ、その音は、最初、音叉で聞いた音と同じですか? まだずれているような気がしますか? というか、もう既に、最初の音叉の音程の記憶がなくなってませんか? しょうがない。そこで、またバイオリンを置いて、音叉を手にとってコーン......

手は二本しかないので、音叉とバイオリンは同時には扱えません。で、交互に持ち替えて音を鳴らしながら両者の音程を比較するんですが、これができるのは、音を鳴らす作業をしながら、コーンと鳴った音の記憶を保持し続けられる上級者だけです。普通、初心者にはできません。――じゃあ、まったく調弦の支援ツールになってないじゃん! はい。そのとおり。なので、音叉は要りません。

 と、いうわけで、チューニングメータ(チューナー)を買いましょう。それも、バイオリンのヘッド(渦巻き)の先を挟んで取り付けるクリップ付きのやつです。1000円前後で手に入るはずです。これならば、正しい音を視覚的に把握しながら、両手でバイオリンの調弦作業ができます。

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さて、具体的なチューニングの手順です。

最初は、2弦から調弦します

別に何弦からチューニングしてもいいんですが、まぁ、無害な慣習なので、従っておきましょう。バイオリンの糸巻きを上にしてみたときに、右から2番目の弦。2番目に細い弦=2番目に高く調律する弦です。これを、Aにチューニングします。

......A?

Aは、音名です。ドイツ式なら「あー」で英語なら「えー」、イタリア式にドレミの歌で言えば、ラッパのラ~♪の「ラ」です。音の高さを表します。物理的に表現すれば440Hz(ヘルツ)。人間の耳にとって最も感受性がよいといわれ、生まれたばかりの赤ん坊の泣き声の音程とも言います(ホントかいな?)。

 

なお、応用編として、緊張感や力強さを表現したい場合、全体をやや高めに調弦することがあります。例えば、2弦A=442Hzといった具合に。これは、弦の選び方の一連のエントリでも書いたとおり、弦の張力を強めて、剛性の高い状態にするためです。文字通りテンションの高い張りつめた演奏ができます。A=442Hzくらい高めにチューニングする程度なら、まぁ問題はないのですが、ギターのように、半音、一音と高くチューニングするのは避けましょう。バイオリンは、もともとギターより1オクターブほど高い音域で弦の張力を保つ楽器なので、約20Kg重という非常に過酷な力で弦が両端を引っ張っています。例えば、2弦をラではなく、一音高くシに調弦しようとすると、チューニング中に弦が切れればいい方で、最悪の場合は、本体がメリメリっと......。

逆に、昔は基準音が低かったため、古楽器を持ち寄ったアンサンブルなんかは、A=438やそれ以下に設定すると聞きます。材料の強度などの問題で、高い張力だと古楽器に負担をかけるからとも言います。そんなわけで、A=440Hz以下なら、現在の楽器にとって負担はないのですが、当然、音量は小さくなりますし、弦のテンションもゆるくなりすぎると弾きにくくなります。

ま、ここでは、とくに奇をてらわず、A=440Hzでチューニングしておきましょう。

次に1弦をチューニングします

さて、貴方は、無事、2弦をAに調弦することに成功しました。次は、2弦を基準にして、1弦を調弦します。1弦は、最も細い=最も高く調律する弦です。音程はEです。ドイツ式で「えー」、英語で「いー」。イタリア式で言えば「ミ」ですね。

きらきら星による完全5度チューニング

私が初心者のときには、「きらきら星」で合わせるんだよ~って教えられました。今でも、チューニングの際には、無意識に頭の中できらきら星が鳴ります。

きらきら星の出だしの、♪きーらーきーらー♪、の部分は、完全5度の関係になっています。バイオリンは、4本の弦全てを完全5度の関係でチューニングするので、開放(押さえない)で隣接する2本の弦を弾いて♪きーらーきーらー♪になればいいのです。

つまり、2弦は先ほどAにあわせたので、2弦と1弦で、「きらきら星」が出来るようにすれば、1弦は、ABCDE(=5個目で完全五度)で、Eにチューニングされたことになります。で、再びチューナーの表示を見ながら微調整します。

なんで最初からチューナーに頼らないかと言えば、一般的なチューナーは、半音刻みで、一番近い音をターゲットとして誘導するからです。つまり、Eにチューニングしたかったら、少なくともEのプラスマイナス1/4音以内に寄せてあげないと、チューナーが正しく指示(高い低い)を示してくれないからです。そのために、まずは「きらきら星」であたりをつけます。

3弦、4弦の順にチューニングします

2弦を基準に3弦を合わせ、次いで3弦を基準に4弦を合わせます。きらきら星で大まかにあたりをつかんだら、もうチューナーに頼ってしまいましょう。上記で紹介したチューナーを使って実際にチューニングしてみます

まずは、指ではじいてみましょう。

 

慣れてきたら、弓で弾きながら調弦しましょう。

このときは、右手で弓を持ち、左手でテールピースのアジャスタを回します。その間、バイオリンは顎と肩だけで保持しています。

こんな風に。

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そんなところですね。

あ、そうそう、前回告知した「2時間で曲が弾けるようになる」初心者レッスン 4/12(土)は、満員御礼で締切になりました。はたして本当に2時間で曲が弾けるようになるのか!? 結果はまた報告します。


ごくたまーに、「チューナーなど邪道。音感を鍛えて自分の耳で調弦しろ」みたいなことを言う輩がいますが、そういう宗教じみた発言に耳を貸す必要はありませんよ。そこに便利な道具があるんだから、使えばよいのです。そもそもチューナーで正しく調弦してこそ耳が鍛えられ、そのうち自分の耳で微妙な差異を聞き分けられるようになるのです。順番を間違えちゃいけない。だって、まだ音楽は始まってすらいないではないですか。一直線に、もっとも早く、正確にチューニングできる方法で作業を終えて、さっさと音楽の時間を始めましょうや。その際、考えるべきは、純粋に「効率を考えた道具選び」。よって、ここでは使いやすさだけを問題にすればよろしい。

sheeee.jpg

上図の「シェー」には、「自分の音感」とか「ヒャクマンエン以上の楽器」とか「子供のころからのレッスン」とか「なんとかという曲を弾けること」とか「毎日~時間以上の練習」とか、そいういうフレーズが入ります。ビジネス上の嘘か、「俺はやってる」という自慢の前振りか、ただの虚言です。そんなの一切なくても、効率よく上手くなる奴はいくらでもいます。壁打ち(=反復練習)は絶対に必要ですが、だからこそ、合理性が重要でしょう。我々、趣味で弾きたい人間にとって、「シェー」にエネルギーを割くほどアホらしいことはありません。