トラッドには、いくつか独特な演奏法があります。

特に、ケルティックな小技は、単純な旋律に、哀愁のある味付けをします。さりげない隠し味ですが、ピリリと利いて琴線に響きます。そんな小技の一つ。カット(cut)について、いつものように、我流で説明してみようと思います。

カットとは、非常に素早く装飾音を入れるテクニックです。言葉で説明するより、見てもらう方が早い。こんな感じ。

途中でトリプレットなども出てくるので紛らわしいですが、注目ポイントは出だしのフレーズです。最初の5音目からクラシックでいう、トリルを3音だけ素早く弾いているような装飾、これがカットです。

やり方は、装飾を入れたい音の、1度上の音、攻めたい場合は2度上の音を、「極わずかに」「瞬間的に」入れます(ちなみに,「攻めたい」というのは、カットそのものを目立たせて、その効果を浮かび上がらせたいという意味です)。ベストのタイミングは存在するのでしょうが、個人的には、速ければ速いほどイイカンジです。"カット"というくらいなので、装飾音そのものは実は鳴らなくてもいい――曲にもよるのですが、鳴らなくても基本のメロディには影響がない装飾音なのです。思うに,装飾「音」とはいえ、実は音が途切れてリズムにキレ味が出るところに本質があるような。

もう一度、ややゆっくりバージョンで。

次に,カット部分だけを取り出して指使いを見てみましょう。

上の動画では,カットの役割を分かりやすくするために,カットなしのフレーズと,カットありのフレーズを交互に弾いて解析しています.これでカットがどの音を強調したいのか,演奏者の意図が分かりやすくなったと思います.カットを入れることで,もともと1つの音だったところが,同じ時間内に短い3音が畳みこまれる状態になります.ここにアクセントが生まれ小気味よいダンスチューンのキレ味が表現されるのです

こういう装飾は、仮にスコアがあっても、そこには指示はなく、演奏者が感覚的に挿入するものです。そこには、なんらかの出現パターンがあるわけなんですが、文章で説明するようなことではないので割愛。上手い人の演奏を聴いてコピーしているうちに、なんとなく入れたい場所が出てくるもんです。ちなみに、私は、手が動く限り多用する傾向があります。盛りだくさんのサービス精神です。

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エルデ楽器という友人の工房ショップで,上記のようなノンクラシックなバイオリン奏法をレッスンしています.気になった方はこちらへ♪