タグ「フレットバイオリン」の一覧

お久しぶりです。

エルデ楽器に協力して、フレットバイオリンのレッスンを手伝っている関係で、そのレッスンの場所を掲載します。2016年から巣鴨の「レソノサウンド」という場所になるようですので、先日、訪ねてきました。JR巣鴨駅のすぐ近くですね。徒歩3分。

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巣鴨駅の南口を出ます。南口ですよ!

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ここを写真奥に向かって歩きます。花屋の看板が目印かな。

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てくてく真っ直ぐ歩いていくと

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それほど歩かないうちにガソリンスタンド「エネオス」の看板が見えてきます。行きすぎた角、カレー屋「CoCo壱番屋」の手前を左折。左折してすぐの右手に「レソノサウンド」はあります。

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下の写真は左折直後の風景。右手の赤い建物の手前です。本当に曲がってすぐです。

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正面玄関はこんな感じ。なんとなく、入り方に戸惑いますが、心配無用です。躊躇せずドアを開けて中に入れば受け付けがあります。

レッスンはこんな感じ。全くの初心者でも、きっと2時間で曲を弾く体験ができることでしょう。その達成率は今のところ91%です。

受け付けはエルデ楽器のウェブサイトでどうぞ。

 

さて、前回は、フレットバイオリンを使った「2時間で曲が弾けるようになる初心者レッスン」のカリキュラムを作って、講師をやったよ、という内容でした。

今回は、具体的にカリキュラムの作成手順についての話です。せっかくの機会なので、専門である認知工学の知見も取り入れつつ、それなりに練ってデザインしたので、自分の思考過程のメモを残しておきます。

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最初に大枠の方針を定めました。

エルデ楽器の理念は、「アマチュアのバイオリン弾きを応援します!」というものです。そこで、初心者~中級者~上級者が、あくまでアマチュアのバイオリン弾きとして目指すゴールを仮設しました。上図の「上級者」ゾーンで3つに分かれている部分がそのゴールです。レッスンをきっかけにバイオリンを始めた人が、最終的に辿りつきたいゴールは、この3タイプに集約されると考えています。 ちなみに、「技術の習得」ではなくて、「バイオリン生活」をゴールにしている点に特徴があると思っています。技術的な弾き方だけじゃなくて、その技術を使って音楽生活に踏み出すサポートをカリキュラムに含むわけです。

さて、カリキュラムの全体方針については別のエントリでもう少し語るとして、このエントリでは、上図の左の「初心者」へのレッスン内容に焦点を当てて解説します。

「初心者」であるあなたは、エルデ楽器のレッスンに参加すると、「え? これだけでバイオリン弾けんの?」という感想をもつでしょう。なぜなら、このレッスンには、一般的な初心者用テキストに書かれているような基礎知識や基礎練習が全く出てこないからです。そう、このレッスンは、曲を弾くために必要な最小限の情報と手指の訓練時間だけで構成されています。あなたは2時間のレッスンの間に、弦を押さえ弓で音を出すことだけに集中して、一直線に曲を弾く体験をつかんでください。

この「一直線」の方針には、大きな理由があります。

それは、モチベーション・コントロールです。バイオリン弾きが、「だめだ、つまんね、やーめた」となるのは、実はあるタイミングに集中しています。バイオリンを始めてみようかな♪ と思い立って楽器を弾いてみたときです。まぁ、わかりやすい話ですよね。3日坊主という言葉が示すとおり、何事も初めの一歩が最も不安定でドロップアウトしやすいもんです。ダイエットでもランニングでもそうじゃないですか、「始めてはみたけどさー、3日でやる気なくしたわ」となる例を挙げれば枚挙に暇がありません。ここを乗り切って定常状態にのせるためには、モチベーションをコントロールする工夫が必要なのです。

モチベーション・コントロールについては、簡単な方法が知られています。「やる気を引き出すには、その人に技量につりあった難易度の課題を与える」というものです。言い方を変えると、人は難しすぎたり簡単すぎる課題が与えられると「やる気をなくす」のです。これはちょっちアカデミックに言うと「フロー理論」に基づいた考え方です。

フロー理論基礎.gif

フロー理論は、もともとスポーツ選手の育成法に使われていましたが、ゲームのデザインなどにも応用されています。例えば、モンハンで最初に出てくるモンスターは大した反撃能力もない草食竜です。それを倒して狩の基本を覚えると、次のミッションには、もっと手強いモンスターが待ち構えています。このモンスターが強すぎれば「無理ゲーすぎて、つまんね」となりますし、弱すぎれば「ただの作業じゃん、つまんね」となります。プレイヤの技量に合わせてゲームの難易度を上げていくことでモチベーションを維持しつつ、ゲームをより難しく、より達成感を得られるように高度化していきます。

そこでバイオリンの話に戻りますが、この楽器は、おそろしく敷居が高いシロモノです。他の楽器――例えば、リコーダ――は、息を吹き込めば誰でも音を出せるし、どれかの孔を指でふさげば、決まった音程がでます。しかしバイオリンは、右手で弓で弦を擦って音を出すこと自体が難しく、さらに左手の指で弦を押さえて音程を作るのですが、このときの正しい指の位置がものすごくシビアで、かつ学習するのがとんでもなく難しいのです。モンハンの例でいえば、コントロールも覚束ない最初のミッションに最強のボスキャラであるアルバトリオンが出てくるようなものです。勝てるわけねー。要するに、全く音楽になりません。それでも、この無理ゲー状態をコツコツと続けて技量を磨いていけば、いつの日か、うまく弾ける日が来るかもしれません。しかし、普通の感性の人であれば、全く音楽にならない練習をコツコツつづけるモチベーションが続きません。幼少の頃からそういう「おけいこ」だと教えられれば出来るでしょうが、大人になれば、世の中にはバイオリン以外にも楽しいことが山ほどあるので、忍耐の限界を超えればさっさとバイオリンを片付けて次の趣味を探すでしょう。当たり前だ。

そんな状態の初心者に、最初にバイオリンを教えるにはどうすればよいか。2つのアプローチが考えられます。ひとつは、プレイヤーの技量に下駄をはかせて底上げすること。もうひとつは、ミッションの難易度を下げること。そうすればフロー理論が示す「モチベーションを育てる適切な範囲」に近づきます。下に図を再掲します。一目瞭然ですね。


フロー理論.gif

では、技量を底上げするためにどうするか。

ここに登場するのが、「フレットバイオリン」です。これを使えば、「辛い練習」を省略して初心者レベルを飛び越え、いきなりメロディを奏でる「楽しさ」を体験することができます(詳細な楽器と効果の説明は別エントリーに譲ります)。私の好きな例えで言えば、フレットバイオリンは自転車の補助輪のような役割を果たします。何度も転んで痛い思いをしながら練習しなくても、補助輪を付ければ、サイクリングする「楽しさ」を先取りできるのです。この「楽しさの先取り」こそ、フレットバイオリンが初心者にもたらす 最大の恩恵でしょう。楽しければ楽器練習を続けられるのですから。

次に、ミッションの難易度を下げるにはどうするか。

ただ音を出すだけでも難しいのに、曲を弾くというミッションを課しているので、何としても難易度を下げる必要があります。簡単な曲を選ぶのは言うまでもありませんが、その他の工夫として、レッスン参加者の認知リソースを管理しています。認知リソースとは、何かに注意を集中したり、物事を記憶したりといった知的作業で使われる、脳という名のCPUのメモリのようなものです。初めてバイオリンを弾くときは、覚えることがたくさんあり、注意すべき事柄もたくさんあるため、脳のメモリがオーバーフローしがちです。そこで、「バイオリンで曲を弾く」というミッションを、できるだけ小さなタスクに分割します。その上で、ひとつのタスクを練習している最中に、別のタスクを挟まず、その習得のためだけに認知リソースを振り分けるようにします。例えば、左手の指で弦を押さえる練習をしているのであれば、右手で弓を持つ技術についてはひとことも触れません。レッスン参加者には、全ての注意を左手だけに集中してもらい、ある程度習得したら次は右手という具合にミッションを細分化して順番に進めていきます。この考え方でレッスン時の指示を削りに削って、究極までシンプルにすることで、なんとかかんとか曲を弾くというまとまったミッションを達成させることができるわけです。

こんな風に、フレットバイオリンの特性を活かして、初心者には「一直線に曲を弾く」レッスンを組み立てたのでした。とりあえず初心者レッスンの話はおしまい!

2013年を最後に更新が途絶えていましたが、唐突に更新を再開します。数年のブランクに何をしていたかと言えば、新しくバンドを作ったり、超絶好みのアイドルユニットに惚れ込んで宅録したり、バイオリンを使ったゲームを作ったり、まぁ、相変わらず脈絡なく楽器を弾いて遊んでました。

で、その中でも、特筆すべき活動といえば、フレットバイオリンですかね。ちっとばかり縁あって巡り合ったシロモノで、当初は、「へぇー」くらいに横眼で見ていたんですが、その後、パイロットプレイヤーという立場で継続的にこの楽器を弾くことになりまして。さすがに数年関わっていると全容が分かってきます。口幅ったいようですが、このギターとバイオリンのハイブリッドのような楽器について、現時点で当ブログが客観的に最も詳しく解説できるはずです。ここ数年の振り返りメモも兼ねて、かいつまんで紹介していきましょう。

fretviolin

フレットバイオリンとは......という概要は、当ブログで2013年8月に記載したフレットバイオリンの試奏レビューの中に詳しいんで、まずはそっちを参照してもらうとして、これ以降では、その先の話を。

語りたいことは山ほどあるんだけど、オマエが何を根拠に知った風に語るんだよ? と言う反応がまぁ普通だと思うので、まずは私が関わった活動の中でも、最も時間をかけてきた「レッスン」について内幕を開示して、そこそこフレットバイオリンについて研究したんだぜってところを見てもらいましょうか。

***

友人が立ち上げた「エルデ楽器」が主催したレッスンは、2014年の4月から現在までに24回を数えます。その企画段階でカリキュラム作製を依頼されたのがこの楽器に関わる契機となりました。飲み会の席でエルデ楽器の工房長から直々に「普通のバイオリニストじゃだめなんだ!」と頼まれたのに気を良くして、「OK、OK、フレットバイオリンってのはさ、細かい音程を気にしないで弾けるんだからさ、要するにリコーダと同じ難易度ってことだろ! 楽勝!」と景気よくぶちあげて引き受けたんですが、要するにちゃんとしたバイオリニストに頼むと金がかかる。お前ならタダ。ということだったらしい。ともあれ、一か月くらい試行錯誤しつつ「2時間かけて初心者にレクチャーして、なんとか曲(らしきもの)を演奏できるところまで到達させる」というコンセプトでカリキュラムを組みました。名付けて「2時間で曲が弾けるようになる初心者レッスン」。そのままだね。

当初は、上手くいく可能性は半々くらいかな、と思っていたんですが、実際に試してみると、これがなんとかなる。レッスン参加者の中には、バイオリンはもちろん、楽器と名のつくものにほとんど触れたことがない人や、カラオケも含めて音楽に縁がないという「音楽の初心者」もいて、極めてハードルの高いレッスン回もあったんですが、それでもほとんどの人が簡単な曲を弾けるようになって帰っていくわけです。......無論、2時間やって弾けない人もいました。「なで肩」でバイオリンを肩にホールドできなかった人、途中で指が痛くなって弦が押さえられなくなった人。一番申し訳なかったのは、他のレッスン参加者が偶然にも全員楽器経験者ばかりで、一人だけ課題にてこずってしまう状況にすっかり自信喪失してモチベーションが持たなかった人です(これは講師としても反省すべき回でした。スミマセン......)。

ともあれ、カリキュラムは概ね良好に機能しました。

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ここ半年のレッスンでは参加者に事後アンケートに協力してもらっています。「曲が弾けたか?」という設問に対し、「6:とてもそう思う――5:かなりそう思う---4:ややそう思う――3:ややそう思わない――2:あまりそう思わない――1:全くそう思わない」という6件法で評価してもらった結果はこんな感じ。

本当に2時間で曲が弾けた.gif

敢えてネガティブに言うと、100人いたら9人くらいは「2時間で曲が弾けたかって? ......あんまりそう思わない」という体験をした、と。その他の人は超弾けた! というわけではないけど、かなり弾けたんじゃない? というトーンで回答してる。ちなみに、エルデ楽器のウェブサイトにもアンケートの結果が掲載されていますが、あちらよりこっちの方が新しい結果でデータ数も多いので、より正確です。なにより、この結果は円グラフで表現しないと伝わんないと思うし。ついでに、他の項目も掲載しておこう。

楽しかった.gif有意義な体験だった.gifレッスンは難しかった.gif

なんか、皆、フレットバイオリンを触っているだけで面白いみたいで、「楽しい」とか「有意義」という項目にネガティブ回答はゼロ。レッスンの難易度は、割と簡単だと評価されているらしい。ほほぉ......それなら。と言いたいところだけど、せっかく作ったテキストを変更するのは面倒だから、当面このままでいいや。

久しぶりにたくさん書いたな。次回、レッスンカリキュラムの中身についてツラツラ書きます。

友人のエルデ楽器さんに依頼されて、バイオリンのレッスンイベントを開催します。

最初に、企画の目論見を説明してしまいましょう。


●日時: 2014年4月12日(土) 
               13:00-15:00(一回目)
               16:00-18:00(二回目)

●場所: 都内のカラオケ屋 
  ※ 現在のところ、コートダジュール銀座コリドー店を予定しています

●料金: 3000円(税込)  ※ レッスン料金、レンタル楽器料金、レッスン資料、カラオケルーム料金、ワンドリンク料金、以上の全てを含みます

※ エルデ楽器が、トライアルだから無料でいいや、との方針を示したことから、当日、実費(場所代)清算のみの、実質無料となりました。

standard_img1.jpg 
こんな部屋で5,6名で、ワイワイやるイメージです。

●レッスンの概要:

   バイオリンの大体の仕組み(弦の音の構成など)
   
フレットの押さえ方
   
タブ譜の見方
   バイオリンを弾く姿勢(構え方・弓の持ち方)
   
曲の練習
   合奏

>>> エントリはこちら


タイトルにあるとおり、楽器の初心者さんでも、「2時間で曲が弾けるようになる」ようにするのがコンセプトです。従って、バイオリンを弾くのに、絶対に必要な実践スキルのみを2時間にギュギュっと凝縮します。当然、あ・く・ま・で・も、楽しく♪

Q: 本当に2時間でこんなにできんの? 

A: 常識的な感覚に従えば、ギリギリアウトな構成です。

「は? アウトなの?」と、お思いでしょうが、まぁ、無茶です。普通のバイオリンレッスンで、初心者が何をどのくらいやるかは、「バイオリン レッスン 初回」あたりでググれば出てくると思います。上記の内容と、比較してみてください。分かりやすく例えるなら、自転車に乗ったことのない人に、「2時間で乗り方教えるからサイクリングに行こうぜ♪」と言っています。ほら、無茶でしょうが。

それを承知で無茶をする、チャレンジャブルなレッスンと捉えてください。ぶっちゃけていえば、実験的なモニターイベントです。実践パイロットスタディです。

故に、2時間で3000円としました。 ※ 上記のとおり、実質、無料となりました。

この金額には、上記のように、カラオケルームの料金も、ワンドリンクオーダーのための飲み物代も入っています。レッスン用に資料冊子を作って配布します。それも無料です。それから、初心者の人がバイオリンを持っているとは思えないので、エルデ楽器の商品在庫を、レッスン用に出してもらいました。この楽器のレンタル料金も無料です。そうすると、この楽器は、もうお店で正価では出せない上に、使っていれば切れた弦の保守等々でもお金がかかるわけで、この企画自体、多分、大赤字です。が、エルデ楽器は「まぁ、いいや」だそうです。エルデ楽器には大変悪いんですが、涙を飲んでもらい、この料金を通させてもらいました。ははは。実験には金がかかるもんなんだよ。

その代わり、2時間で本当に曲が弾けるようなレッスンができれば、それはフレットバイオリン、ひいてはエルデ楽器の宣伝になりますんで、成功した暁には、おおいに成果の宣伝に協力してあげてくださいな。アンケートかなんかで「喜びの声」のコメントを求めたりするかもしれません。その際は、2時間でバイオリンが弾けるようになった上に、恋人ができて、さらに、背も伸びた、くらいに盛ってあげてください。

ところで、私は、講師を頼まれて引き受けたわけですが、当然、まるっきり勝算なく無茶をするつもりはありません。実は、これまでに何度かトライアルを重ねた結果、ちょっち自信を持っています。その最大の理由は、フレットバイオリンを使う点です。

fret-violin_and_violin.jpg

図のように、バイオリン(上)と、フレットバイオリン(下)には、際立って異なる箇所があります。言うまでもなく、「フレット」の存在です。バイオリン初心者が曲を弾くところまでたどり着けないのは、慣れない指で音程をキープできないからです。そこで、普通なら、正しい音程がとれるまで、いわゆる反復練習をすることになるわけです。毎日毎日、繰り返し繰り返し。これ、修行です。大切かもしれませんけど、つまんないです。

一方、フレットがあれば、押さえる位置が仕切られていますので、それほど精密に指先をコントロールしなくても、簡単に正しい音程がキープできます。音程さえ正しければ、それほどストレスなく「曲を奏でる」ことができます。

曲が弾ければ楽しい! 

これが重要。自転車の場合で例えるなら、フレットバイオリンにおける「フレット」は、自転車の「補助輪」として機能するんですよ。これなら、ご近所のサイクリングくらいなら行けるはず。転んでばかりの反復練習ではなく、楽しくすいすいご近所を走って、先に感覚的に乗り方を身につけてしまう。同じ練習するなら、こっちの方が効率もよさそうでしょう? 

そんな風に、2時間でバイオリンを弾く体験をして、「楽しい感覚」を持ち帰ってもらえれば、ひょっとしたら数年後に、超絶バイオリンがうまくなって一緒に遊んでくれるかもしれない、というのが講師である私のモチベーションです。あと、本当に2時間で弾けるようになる凄いカリキュラムが確立したらヤマハか河合楽器あたりに持ち込もう、とか(笑)

と、まぁ、そんなイベントです。暇だからひとつバイオリンっちゅうもんを弾いて遊んでみよー、というくらいの気構えで来てくださる方なら、どんな方でも結構です。......あ、いや、私より上手い人は絶対来ないでください。

やってみようかな、という方はエルデ楽器のウェブページへどうぞ。またコメント開けますんで、質問があればどうぞ。

先日、ライブでフレットバイオリンを使いました。

その後、この特殊な楽器についての問合せがいくつかありました。特に、「なぜフレットがあるのにビブラートやスライドができるのか?」という疑問が多いようです。で、これに対して、切れ味鋭く、

「気にすんなよ」

と、回答してもいいんですが、せっかくのサイト更新ネタを無下にするのももったいないので、ちょっと考察がてら、言葉を尽くしてみましょう。

***

そもそも、一般的に、バイオリンにフレットがついていないのは何故でしょう? いろいろ回答はあるでしょうが、ひとつは、技術的に困難だからです。

下の動画は、バイオリンを弓で演奏した時の弦の動きを高速度カメラで撮影したものです。

バイオリンの弦は、長軸まわりにねじれて回転しながら、大縄跳びのように、こんなにも大きな振幅でぐるんぐるん動き回るのです! 擦弦楽器ならではの演奏法によって生まれるこの回転が、バイオリンらしい音色を生み出します。そして、このびっくりするほど大きな振幅は、楽器の女王たるこのソロ楽器の、大きな音量を表しているわけです。

さて、ここで注目すべきは、振幅です。この動き回るバイオリンの弦が、関係ないフレットに触れてしまってはいけないわけです。つまり、フレットがある程度以上高いと、振動する弦に触れて、ビビビビとノイズが乗る、いわゆる「ビビる」状態になってしまいます。しかし、フレットが低すぎてもいけません。指で押さえた位置のフレットは確実に、弦を止めて振動の基点を作らねばならないからです。考えてみると、何十分の一ミリといった絶妙な高さのコントロールが必要です。

フレットの形状にも工夫が要ります。指板の上の指の動きを邪魔せず、かつ弦の振動はピッタリの位置で止めるように、フレットの頭は、鋭角過ぎず、丸過ぎずの形状が望ましいでしょう。若干、話は逸れますが、かつて、アメリカ製のフレットバイオリンを触ったことがあります。それは30万円以上する値段で売られており、見かけは艶のある高価そうな楽器でしたが、弾いてみると、指がフレットにあたって痛いのです。で、怪訝に思ってよく見ると、フレットは打ちっ放したまま、エッジを丸めていないお粗末なつくりでした。その手抜きの影響は、一目瞭然でした。フレットの位置で、弦が切れかかっていたのです。

私の所有するフレットバイオリンは、今のところ、上記のようなトラブルには一切見舞われていません。製作者のエルデ楽器は、ウェブサイトにて、フレットバイオリンを生み出すために、15年の研究をしたと謳っていますから、フレットの高さに関しても、形状に関しても、おそらく相当な試行錯誤を経て仕様を決めているはずです。......多分。

viol-pictures.jpg

ところで、同ウェブサイトには、ヴィオール族の古楽器を復刻したという記述もあります。このヴィオールの頃は、フレット代わりに、弦(ガット)をネックに巻きつけていたらしいですね(そのことを知るまで、古楽器の写真を見るたびに、「なんでフレットがグニャグニャ曲がっているんだろう?」と思っていました)。なるほど、同じ弦同士なら、素材の硬さが変わらないし、断面の丸い弦なら、エッジがないので、弦が切れにくいわけです。

閑話休題。

で、要するに、フレットバイオリンにおいては、フレットの高さや形状が、絶妙に調整されている必要がある、ということなんですが、その結果、なにが起きるかというと、フレット機能に"遊び"が生まれるのです。どういうことかというと......、

最近、「フレットバイオリンのレッスン会」なるイベントに何度か講師役で参加する機会がありました。そこで、気が付いたことですが、本当に楽器を触るのが初めてという人は、フレットと弦の関係が分かりませんから、「フレットの間を指で押さえる」と聞くと、恐る恐るフレット間の自由な位置を指で押さえます。その結果、非常に弱い力でヘッド寄りの部分を押さえてしまうことがあります。すると、半音近く低い音が出ます。そう、実は、この楽器、フレットの中で押さえる位置と力加減によって音程が変わるのです。これが、フレット機能に"遊び"があるという表現の意味するところです。

 sweet-spot.jpg

要するに、フレットの中であれば、どこを押さえてもいいというわけではないのです。安定した正しい音程を得るには、押さえるべき"スウィートスポット"が確実に存在します(もちろん、通常の力でそれなりの場所を押さえれば、安定した音程が得られます。しかし、積極的に音を変えようという意思をもって微妙な力加減で指を動かせば、フレット内でも音程が変化します。そのあたり、やはりフレットの高さが絶妙と言わざるを得ません)。

大まかに次の表のように、特性を整理できるでしょう。

pitch_controllability.GIF

表中の、フレットバイオリンとギターとの違いは、フレットの中で指先を動かしたときの音程変化の幅にあります。ギターよりバイオリンの方が、音域が1オクターブ以上高いため、弦長が少し変わるだけで音程の変化が大きいのです。また、ギターは、コードを弾く楽器ですから、複数の弦を同時に押さえて弾いた時にハーモニーが崩れないように、フレットを高めに設定して安定させているのでしょう。ギターは、比較的フレットの"遊び"が少ないわけです。

で、このフレットの"遊び"の話は、最初の疑問、「なぜフレットがあるのにビブラートやスライドができるのか?」に戻ってきます。要するに、フレット機能の"遊び"がビブラートを可能にしているのです。さらに、ギターよりフレットが低いため、比較的なめらかにポルタメントやスライドができるというわけです。

......って言うか、「ギターでも、ある程度はビブラートをかけられますし、スライドもできますよね。その"遊び"の余地が大きいんですよ!」という説明の方が簡単だったわ。

8月4日は「バヨリンの日」.

楽器工房を開いている友人が,これまでの人生の大半を費やして,「フレットバイオリン」なるものを作成したというので,大笑いした後,冷やかし半分に,「試奏してやるよ」と,上から申し出たところ,存外に改まって「是非に」と頼まれたので,真面目にレビューしてみます.

さて,フレットバイオリン.

調べるてみると,希少なのは確かですが,世にも珍しい,というわけではなくて,例えば,"fretted violin" で検索をかけるとアメリカを中心に,ある程度ヒットします.要するに,バイオリンの指板にギターのようにフレットが付いているというシロモノです.

今回,試奏するにあたって,制作者の工房に押しかけたところ,何本かフレットバイオリンの完成品が並ぶ中に,キラッと輝くように,さらに異色なバイオリンが目にとまったので,「誰が何と言おうとこれを弾く」と高らかに宣言して持ち帰ってきました.フレット付き,さらに5弦のレアアイテム.

fret-violin-5strings.jpg

さて,まずは,「フレット付き」の特徴を確認してみよう,ということで,普通に音階を弾いてみます.さらに,音程が固定されることは分かり切っているので,ピッチコントロールが比較的難しい重音(ダブルストップ)でのパフォーマンスを確かめてみました.要するに,簡単に正しい音程で弾けるかどうか試したわけです.

当たり前ですけど,音程に気をつけなくても,ピッチは狂いません.狂うとすれば半音一気に狂いますが,この場合は,音程が狂ったのではなく,単に「押さえるところを間違えた」というべきでしょうね.

ところで,バイオリンは,ある程度,腕があっても,きっちり2つの音程をコントロールしたまま奇麗な重音を響かせる演奏――例えば,シンセサイザーが担当する「ストリングス」のような演奏――には向かない楽器です.もともと弦を2本押さえるために,手の形を不自然に捻るわけですから,その状態で指先の微妙な位置を長時間にわたって固定し続けるのは,そりゃ難しい.しかし,そこにフレットがあれば,弦を2本同時に押さえても,指先の位置はある程度,アバウトでいいわけです.そんなわけで,重音の演奏が楽! ということが分かりました.まぁ,頭で考えれば不思議ではありませんが,実際にやってみると,「おや,これは便利!」という感想です.

で,次に懸念事項なんですが,

簡単に言うと,フレットが「ない」というバイオリンの特徴が,フレットを付けることで消されてしまう恐れが大きいわけです.具体的には,フレットの中で細かく指を動かしても,音程は変わらないと考えられるので,フレットの中での指先の細かい震えによる「ビブラート」はちゃんとかかるのか? それから,音程を滑らかに変化させる「グリッサンド」や「スライド」は,フレットがなければ滑らかですが,フレットがある状態では,ガタガタとした階段状の音程変化になってしまうのでは?

まぁ,ひとつ試してみましょう.

まず,ビブラート.

......は,良く見ると,上に挙げた動画で十分にかかっているのが確認できたので割愛.なんとびっくりですが,フレットごしでも,十分に,というより,普通のバイオリンと全く何も変わらずに,ビブラートがかかります.特に演奏法も変わりません.

グリッサンドはどうでしょうか? まずはグネグネとグリスをかけまくって音を出してみます.

驚いたことにこちらも,ほとんど影響がありません.グリッサンドでもスライドでも,音がガタガタに変化することなく,スムーズです.ちなみに,音を変化させるときの始点と終点が決まっているのがスライド,そうではなくて,装飾やニュアンスとしてなめらかに音を滑らせるのがグリッサンドです.まぁ,用語なんかどうでもいいや.とにかく,両方できます.

民族音楽なんかによくある,半音下から音を出す弾き方も試してみます.

違和感なく弾けました.

んじゃ,行けそうなので,ひとつジャズっぽいバイオリンのフレーズを弾いてみましょう.

と,いうことで,フレットバイオリンは,少なくとも,ぱっと弾いてみた範囲では,問題なく使えそうだ,と結論したところで,以上です.

......せっかくなので,友人の工房ショップ『エルデ楽器』を紹介しておきます.あと,バヨリンの日なんてありませんから,念のため.......8/28は「バイオリンの日」らしいですけど.

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